第2回 小倉百人一首の分類と気象表現
「小倉百人一首」は競技会もあり、広く知られている身近な古典文学です。
また100首という分類をするのに大変わかりやすい数ですので、学習のテーマにしてみましょう。
参考文献として、「評解小倉百人一首」三木幸信・中川浩文(京都書房)、「こんなに面白かった百人一首」吉海直人監修(PHP文庫)、「百人一首で読み解く平安時代」吉海直人(角川選書)を使用しました。
STEP_1 全体把握のための分類
ピボットテーブルを使い、部立(題材による分類)で、小倉百人一首の全体を把握してみましょう。
どの題材が多いか、また、どのように配置されているか、確認していきます。
STEP_2 大気現象の抽出
ここからは、百人一首の各歌に詠まれている大気現象を調べてみたいと思います。
1首ずつ見て大気現象に関する言葉を抜き出していくと、嵐や秋風など風に関する言葉がダントツに多いです。
その他、雲や雪、露に関する言葉も使われています。
現代からみると意外なように思いますが、雨や光(陽光)が少ないですね。
STEP_3 ピックアップして考察
大気現象に関する言葉が使われている歌の中から、1首ピックアップして考察してみたいと思います。
季節柄「雪」の使われている歌にします。
第31首「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪」坂上是則 を取り上げます。
「朝ぼらけ」は夜明けのこと。「有明の月」は明け方の月のこと。
「降れる白雪」の「る」は完了・存続の助動詞「り」の連体形で、現在降っている雪というわけではなく、降り積もっている雪のこと。
また、体言止めで驚きや感動の余韻を残しています。
吉野と言えば有名なものは色々ありますが、その中でも最も有名なのが吉野山の桜でしょう。「みよしのの白雪」を歌う際には、春を待ち遠しく思う気持ちが込められているのが定石のようです。(写真は桜の吉野山)
ただ第31首の歌については、明け方の月の光と見間違えるほど吉野の里に降り積もった白い雪の明るさを詠んでいます。
現代でも「吉野の里に降り積もった白雪」を見ることができるか、調べてみたいと思います。
アメダス地点で吉野はありますが、降水の観測のみですので、積雪がわかりません。
調べる方法は他にもあると思いますが、今回は大雪注意報の発表状況を確認してみます。
奈良県 五條・北部吉野の大雪注意報発表基準は「平地 12時間降雪の深さ5センチメートル、山地 12時間降雪の深さ10センチメートル」です。
奈良地方気象台発表の「奈良県の天気」2022年1月から2025年11月までを確認すると、1シーズンに2回程度、大雪注意報が発表されています。
坂上是則が歌を詠んでから1100年以上経った現在でも、雪化粧した吉野を見ることができそうです。
この歌について、気象の観点からもうひとつ考察してみたいと思います。寒さについてです。
夜明けに外が明るく感じるほどの月光の場合、満月で雲のない空ではないかと想像します。
冬の夜、雲一つない晴れの天気ですと、放射冷却が効いて夜明けは身を切る寒さでしょう。
一方、夜の間に雪が降り積もったのなら、当然、空には雲がかかっています。また、雪による湿度もあります。
「有明の月」の際の鋭い寒さと、「降れる白雪」の際の柔らかい寒さの対比もこの歌から感じます。
まとめ
今回は小倉百人一首を使い、「全体像を把握」し、「テーマを抽出」し、さらに「ピックアップして考える」ことをしました。
この考え方、手法は、天気図を見る際などにも使っています。
様々な場面で使える考え方ですので、ぜひ活用してください。
記事作成 2025年12月-2026年1月

